映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」
佐藤健さんと土屋太鳳さんのW主演した本作。
内容がほぼ実話であるという点でも大きな反響を呼びました。
今回は映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」結末までのあらすじとネタバレ感想をお届けします!
結末までのあらすじ
映画に先駆けて発刊された小説(ノベライズ版)では、物語が全4章に区切られています。
今回はその区切り通りに進めていきたいと思います。
第1章 3月17日の夢
2006年3月。
西澤尚志(ひさし)は岡山の自動車修理工場「太陽モータース」で働いていた。
趣味・特技は自動車に関することばかり。
真面目に働く尚志は社長の柴田や先輩の室田から可愛がられていた。
ある日、尚志は室田に連れられて合コンへ。
腹痛のせいで終始気の乗らない飲み会だったため、尚志は二次会の誘いを断り先に帰ることにした。
すると、その帰り道…
「ちょっと!」
尚志を呼び止めたのは、合コンのメンバーだった中原麻衣(22)
そういえば、なぜか彼女は途中からずっと尚志を睨んでいた。
「あんな態度ってないんじゃない?」
麻衣はレストランでシェフをやっている。
腹痛のことを知らない麻衣の目には、尚志が料理に手も付けずつまらなそうにしていたように見えていたのだ。
慌てて腹痛のことを打ち明けて誤解を解くと、一転して麻衣は恥じ入ったように謝罪し、二次会へと流れていった。
後日、尚志の携帯電話に一通のメールが届く。
差出人は麻衣。
思ったよりも気に病んでいたのか、先日の失礼を詫びる内容だった。
その日から、尚志と麻衣の関係は少しずつ進んでいく。
メール、電話、そしてデート。
2人のデートは、まるで中学生同士のように初々しかった。
明るく快活でおしゃべり上手な麻衣と、おおらかで誠実な聞き役の尚志。
2人は自然に惹かれあっていく。
そして…
「中原麻衣さん、僕と…つき合ってもらえませんか」
場所は麻衣が働くレストランの駐車場。
麻衣に誘われてフレンチを食べた日の夜だった。
でも、尚志はずいぶん前に店を出たはずだ。
麻衣の仕事が終わるまで、何時間待っていたのだろう?
「それ、言うために待っててくれたの?ずっと?」
「今日、働いてる麻衣を見てたら、やっぱり素敵な人だなと思って…」
返事はいつでもいいという尚志の言葉が終わらないうちに、麻衣は口を開いた。
「はい。私でよければ、喜んで」
「ホントに?やった!」
ガッツポーズをする尚志を見ながら、麻衣は「これからきっと幸せになれる」と予感していた。
それからの日々は、あっという間に過ぎていった。
初めてのキスは夕暮れ時、海が見渡せる展望台で。
夏にはお互いの両親に挨拶をした。
秋には麻衣の誕生日を祝った。
クリスマスには麻衣が腕によりをかけたディナーを味わった。
年が明けて、2007年。
2人の気持ちは、もう固まっていた。
切り出したのは、尚志から。
「結婚しよう」
言葉が詰まり、麻衣はただただうなずく。
麻衣(私たち、今日、恋人から婚約者になったんだね。これからずっと一緒だね。尚志…大好き)
ふと見ると、地元では有名な式場で結婚式が執り行われていた。
憧れの視線を向ける麻衣を見て、尚志はすぐに行動に移す。
2人が出会った日…3月17日。
今年の3月17日に、式場を予約した。
あまりの幸せのせいか、麻衣は激しい頭痛を感じていた…。
第2章 俺たちの悪夢
この頃どうも様子がおかしいとは思っていたが、まさかこんなことになるなんて…。
今、麻衣は見えないものが見えると言って叫んだり、暴れたりしている。
混乱しつつも、尚志は麻衣を病院へと連れていった。
…。
入院から2日、あれから麻衣はずっと目を覚まさない。
…。
1カ月が過ぎた。麻衣はまだ目覚めない。
人工呼吸器につながれた麻衣は、むくんでまるで別人のような風貌になっている。
尚志は毎朝2時間かけて、病室に足を運んだ。
毎日、筋肉のマッサージをしておかなければ、麻衣が目覚めた時に困ってしまうから…。
『抗NMDA受容体脳炎』
それが麻衣の病名だ。
卵巣に腫瘍ができて、それを攻撃するための抗体がつくられる。
その抗体が誤って脳を攻撃したために異常が起きた…ということらしい。
発症確率は300万人に1人。
最近仕組みが解明されたばかりの、珍しい病気だった。
約束の3月17日が過ぎ去った。
尚志は奇跡を信じて式場のキャンセルをしなかった。
今年はダメでも、きっと来年には…。
この頃から、尚志は日々のささいな出来事を携帯電話の動画で記録していくようになった。
できた動画は麻衣の携帯電話に送る。
自分が眠っていた間の日々を、目覚めた麻衣に見せてあげるために…。
明けて、2008年。
変わらない麻衣の状態は、尚志だけでなく麻衣の両親の心をもすり減らしていた。
彼らが最も気にかけたのは、尚志のことだ。
考えたくない事だが、娘はもう目覚めないかもしれない。
若い尚志の将来をこれ以上、奪っていいものなのか…?
悩み抜いた末に、麻衣の両親(浩二と初美)は尚志を家へと招待した。
そして…
「もう君は…いいと思うんだ」
「いいって…?」
「もう麻衣のことは忘れてもらっていいんだよ」
「え…」
少し遅れて、尚志は浩二の言ったことの意味を理解する。
「あの、約束したんです…麻衣さんと結婚するって。あの、僕、大丈夫なんで。なんで、もう少しだけ麻衣さんのそばに、いさせてください」
尚志にとっては当たり前の申し出。しかし、両親の決意もまた固かった。
「ダメだ…君は家族じゃない」
わかっている。2人は尚志のためを思って言ってくれているのだ。
だけど「家族じゃない」と言われてしまえば、もう何も言い返せない。
2人は感謝と謝罪の意を込めて、尚志に頭を下げている。
もう…終わりなのか?
翌朝、尚志は初めて病院に行かなかった。
その日は、一日中、麻衣のことを考えていた。
答えが出る。改めて考えてみるまでもなく、答えはもう出ていたのだ。
さらに翌日。
尚志は麻衣の病室で中原家の両親と対面した。
病室に尚志の姿を見た時、初美はひどく驚き、そして震える声で問いかけた。
「…いいの?麻衣、ずっとこのままかもしれないのよ。それでもあなたは、私たちと家族になるつもり?」
「はい」
即答。迷いのない返事だった。
「ありがとう…ありがとう…うれしい…うれしい…」
涙をこらえきれぬまま、初美は繰り返し繰り返しそう言った。
手術が行われた。腫瘍の出来た卵巣を摘出することで、状況の改善を図る。
…麻衣は目覚めない。
その他にも、いろんな治療法を試した。
…麻衣は目覚めない。
時間だけが虚しく過ぎていく。
今年も3月17日が終わった。
第3章 君の記憶
2008年7月。
何の前触れもなく、麻衣が目を開けた。
視線を動かしている…意識がある!
喜ぶ尚志だったが、事はそう単純ではなかった。
医師によれば、麻衣はいわば生まれ直したような状態であり、その内面は幼児と同レベルだという。
以前の記憶が戻るとも限らないらしい。
2009年3月。
麻衣は少しずつ回復してきている。
今年も式を挙げられなかったが、きっと再来年くらいには…!
3月末、麻衣はリハビリ専門の病院へ転院した。
今の状態は3歳児くらいだろうか…麻衣はころころとよく表情を変える。
声はまだ出せないが、身体も少しずつ動かせるようになっていく。
2010年2月。
麻衣が字を書く練習を始めた。
まだペンを上手く持てず、子供の落書きのような字になってしまう。
それでも、自分の名前を書くことができた。
確かな進歩だ。
2010年の大晦日。
尚志は一時帰宅を許された麻衣と、中原家で過ごした。
紅白を見ながら、麻衣はなにやらぶつぶつと呟いている。
歌おうとしているのか…!
2012年3月。
麻衣は普通に話せるまでに快復していた。
今日は病室で、旧友と中学生時代の思い出を楽しそうに話している。
ずいぶん記憶も戻ってきたらしい。
しかし、尚志や麻衣の両親は、麻衣の様子に少し違和感を覚えていた。
その違和感の正体は…
「麻衣…僕のこと、覚えてない?」
迷いの表情を見せる麻衣。やがて小さく頷いて言った。
「…そうみたいです。ごめんなさい」
麻衣は尚志の記憶だけ、すっぽりと忘れてしまっていた。
知らない男がずっとそばにいたなんて…麻衣はどんな思いをしてきたのか…。
「でも、私、がんばります」
「え?」
「思い出せるように、絶対」
記憶のことを告白した日から、麻衣は尚志のことを思い出そうと懸命に努力した。
思い出の場所を巡り、2人の思い出を聞いた。
しかし、記憶は一向に甦らない。
そのことで麻衣はずいぶん苦しんでいるようだ。
悩み抜いた末、尚志は1つの決断を下した。
「もう、無理しなくていいよ」
「え?」
「これからは、ちゃんと自分を大切にして生きてほしいんだ」
自分のせいで、麻衣を苦しめている。
それは尚志の本意ではない。
だから…
「もう会うのはやめる」
麻衣の新しい人生のために、身を引く。
麻衣と、別れる。
その日、尚志は涙が枯れるまで泣き続けた。
第4章 8年越しの花嫁
麻衣と別れてすぐ、尚志は太陽モータースを辞めた。
岡山からも出て、今は瀬戸内海に面した小豆島の修理工場で働いている。
2013年4月。
倒れてから6年、麻衣はついに退院した。
いつの間にか中原家は車いすに対応したバリアフリー仕様に改造されている。
2014年4月。
リハビリはまだ続いている。医師によれば、子供を産むことは可能らしい。
※卵巣の手術の際、初美が頼んでいた。
それを聞いた麻衣の脳裏に尚志の顔が浮かぶ。
しかし、記憶はまだ戻らない。
そんな中、麻衣は結婚式場のウェディングプランナーである島尾から、3月17日の予約について聞いた。
3月17日。
この7年間、尚志は毎年その日を予約し続けていた、と。
ふと閃き、古い携帯電話のロックパスワードに「0317」と入力してみる。
…開いた!
その瞬間、無数のメールが次々に届き始める。
送り主は尚志。
日常のささいなこと。
寂しく思っていること。
心から麻衣のことを想っていること。
メールを通じて、尚志の愛が伝わってくる。
…こうしてはいられない。
その日のうちに、麻衣は一人で小豆島へと向かった。
再会は、廃学校の校庭で。
「…どうしてもお礼が言いたくて…。ずっと待っててくれた。信じてくれて…そばにいてくれて…でも、まだ思い出せない」
「…うん」
「でも、それでもいい。だって…私、尚志さんのこと…もう一度好きになったから。もう一度って…なんかヘンな言い方だけど」
麻衣…。それなら俺は…。
「俺はずっと好きでした」
麻衣を支えながら、立ち上がらせる。
一歩ずつ、足を踏み出していく。
「歩こう…一緒に。これからも、ずっと」
尚志にとっては二度目の、麻衣にとっては初めてのプロポーズ。
麻衣は泣きながら何度も頷いていた。
尚志(…麻衣、愛してる。二度と離れない)
記憶が戻らなくても構わない。
これからまた一緒に、新しくつくっていけばいいのだから…。
尚志は岡山に戻り、太陽モータースに復帰。
新居は麻衣の実家になった。
2015年3月17日。
2人の結婚式が執り行われた。
立ち上がる麻衣を見て、参列者のみんなが驚いている。
ちょっとしたサプライズだ。
ゆっくりと、歩き出す。
焦らなくてもいい。尚志はいつでも待っていてくれるから。
よろけそうになる麻衣の手を、尚志が強く支える。
麻衣(ようやく、私、あなたのもとにたどり着いたよ。8年越しの花嫁となって…)
<8年越しの花嫁・完>
2015年6月、第一子誕生。
感想
月並みな感想ですが「感動した!」という一言に尽きます。
事実は小説よりも奇なり、とは言うものの現実にこんな…それこそ物語のような出来事が起こるだなんて!
尚志、麻衣、そしてお互いの両親。
登場人物(実在する方ですが)全員が温かい思いやりと愛に満ちていて、なんだかこちらまで幸せにしてくれるような、素晴らしい作品だったと思います。
私が作中で最も感情移入したのは「待つ側」だった尚志。
これまた作品を見た全員が考えることだとは思いますが「もしも自分だったら?」と考えると…正直、私は尚志と同じ行動をとれる自信はありません。
2人は婚約者だったとはいえ出会ってから1年未満だったのです。
作中で麻衣の母親が考えたように、最初は毎日病院に通っていたのが、3日に一回になり、週に一回になり、そしてやがてフェードアウトしていく…もし尚志がそんな行動をとっていたとしても、無理からぬことだと多くの人が納得したことでしょう。
それでなくても、麻衣の両親がわざときつい言葉で「もういいんだ」と言ってきたとき、私だったら心のどこかで「ホッとした」と思ってしまうことでしょう。
だけど、尚志はそうじゃなかった。
創作されたキャラクターではない、仕事も生活もある実在の人物が「もしかしたら一生目覚めないかもしれない恋人を待ち続ける(そのために自分の時間と労力と財産を惜しまない)」と迷いなく決断した…この紛れもない『事実』こそが私の心を強く打ちのめしたのです。
もちろん、その後、麻衣に尚志に関する記憶がないと知って身を引くことを決意した点も同様に衝撃的でした。
自分よりも相手の幸せを第一位に考えることができる「献身的な愛」
多くの物語の中では時に胡散臭く感じることすらあるその概念が、その尊さそのままに生身の人間の内側に存在していただなんて!
心が洗われた、というとちょっと大げさかもしれませんが、「8年越しの花嫁」は人間関係や人生、生き方について少しだけ前向きな気持ちにさせてくれるような、そんな作品でもあると思いました。
抗NMDA受容体脳炎について
麻衣が発症した「抗NMDA受容体脳炎」について少し調べてみました。
圧倒的に女性に多い病気であり、発症者の平均年齢は約23歳(まさに麻衣の年齢ですね)
日本では若い女性を中心に年間1000人ほどが発症しているそうです。
ある研究によれば発症者の約8割が2年間で順調に回復した一方で、6%ほどの発症者が亡くなり、残りの患者には軽度~重度の障害が残ったとのこと。
麻衣の場合、平均よりかなり長く昏睡状態に陥っていたことになりますね。
最悪の事態になる可能性もあっただけに、麻衣が目覚め、そして再び尚志と愛し合えるようになって本当に良かったと思います。
まとめ
今回は映画「8年越しの花嫁」のあらすじ・ネタバレ・感想をお届けしました!
佐藤健さんと土屋太鳳さんが演じる尚志と麻衣は実在の人物、そして奇跡のような物語も実話!
映画「8年越しの花嫁」は、まさに『感動作』と言うべき素敵な作品でした。
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