映画「三度目の殺人」を観てきました!
私は原作小説(ノベライズ)を読んでから映画を観たのですが、新しい気づきや発見が多く、とても面白かったです!
映画と小説とを比べてみると、やっぱり情報量としては文字媒体である小説の方に分がありますね。
映画を観ていても「あ、あの設定とか心情描写とかは説明されないんだな」と何度も思いました。
一方で、映像で見るからこそ直感的に「ああ、そういうことだったのか!」と気づけた点が多かったのも事実。
「三度目の殺人」をまるっと楽しもうと思うなら、映画も小説も押さえておいたほうが良いかもしれません。
というわけで今回は、映画と小説を経て気づいたことや考察したことについてお伝えしていきたいと思います!
※思いっきりネタバレ満載の内容になっています。ご注意ください。
※作品を未見の方は、まずコチラからどうぞ!
Contents
映画「三度目の殺人」のネタバレ考察!
『真犯人は誰なのか?』
河川敷で咲江の父親(山中光男)の命を奪ったのは誰なのか?
終盤では「三隅が性的暴行を受けていた咲江を助けるためにやった」という流れが出来上がったものの、三隅自身は最後の最後になって犯行を否認。
重盛にとっても「何が本当なのかわからない」という状態のまま結末を迎えました。
ちなみに、小説の方には
- 「犯行当時、咲江にはアリバイがない」
- 「咲江にも犯行は可能である
という記述があり、最後まで「咲江が実行犯で、三隅は罪を被っただけ」という可能性が残されていました。
ただ、私は最終的に下した結論は次の通り。
『被害者の命を直接奪った実行犯は三隅である』
なぜか?
注目したいのは「被害者が呼び出しに応じた理由」です。
否認後の三隅は「被害者に食品偽装のことで話があると脅して呼び出し、財布を盗った。しかし、犯行当時に犯行現場には行っていない」と供述しています。
しかし、小説を読む限り食品偽装を主導していたのは妻の美津江であり、被害者にはその自覚がない可能性が高いんですね。
つまり「食品偽装のことで脅されたから」は被害者が呼び出しに応じる理由としては不自然なんです。
まあ、普通に考えて自分がクビにした前科者の呼び出しに、何の危機感もなしに応じると考えるのも不自然ですしね。
よって、三隅の供述は「嘘」
やはり犯人は三隅であると考えました。
なぜ、三隅は犯行を否認したのか?
まず思い浮かぶ理由は「咲江を守るため」ですね。
法廷で父親から暴行されていた事実を話すこと、その事実が周知されることは咲江にとってとても苦しいことです。
そんな状況に咲江を追い込まないために、三隅は(死刑になるとわかっていて)否認したのだと思われます。
※三隅を救いたいという姿勢の咲江は、三隅が犯行を否認したことで「三隅は自分のために犯行に及んだ」と証言できなくなった
ただ、三隅にとって犯行否認の目的はそれだけではなかったように思われます。
タイトルである「三度目の殺人」
三隅にとって1度目のそれは30年前の北海道の事件、2度目は今回の事件、そして3度目は「自分自身を殺すこと」でした。
そう、三隅は「積極的に死刑判決を受けたかった」のです。
その理由はなにか?
三隅は自らを「人の命を奪うことができる異常者(※)」と認識しており、これまでの罪を背負ってこの世から消えるべきだと考えたから
その言動から、三隅は罪と罰に対する意識が高く「罪人は裁かれなければならない」という考えを持っている人物であるように思われます。
であるなら「自分自身も罪人であるなら潔く裁かれるべき」と三隅が考えたとしても不思議ではありません。
だから三隅は判決後、控訴することもなく刑を受け入れたのではないでしょうか(小説の記述)
※作中には「人の命を奪える人間とそうでない人間は生まれた時に決まっている」という考えが登場しますが、これに沿って考えるなら三隅は「奪える人間」ということになりますね
そして、もう一つ。
土壇場になっての否認には、「裁判を(負けという形になるにせよ)早く終わらせたかった」という意図があったのではないでしょうか?
では、なぜ三隅は裁判を早く終わらせたかったのか?
その理由は、やはり咲江のためであるように思われます。
咲江は「ただの被害者」なのか?
もし、咲江が何らかの形で犯行に協力していたとすれば、咲江もまた罪に問われることになります。
それを回避するために、三隅は裁判を終わらせにかかったのではないでしょうか?
三隅にとって咲江が(自分のために)父親から暴行を受けていたことを弁護側に告白したのは予想外のことだったでしょう。
「このままでは咲江が自分の罪まで告白してしまうかもしれない」と考えたからこそ、三隅は裁判の早期決着を望んだのではないでしょうか。
では、咲江の罪とは何なのでしょうか?
ポイントとなるのは、やはり「被害者が呼び出しに応じた理由」
普通に考えれば、被害者が三隅からの呼び出しに応じるとは思えません。
しかし、それが(自分と肉体関係のある)娘からの呼び出しだったとしたら?
あらぬ妄想を膨らませつつ、被害者はのこのこ呼び出しに応えることでしょう(この可能性については小説で重盛も検討しています)
犯行当時、咲江にはアリバイがありません。
事件の真相は『咲江が父親を呼び出し、三隅が手を下した』というものだったのではないでしょうか。
少なくとも咲江が両親に対して十分すぎるほどの「殺意」を持っていたことは確かでしょう。
「器」とは?
映画のラストで重盛が言ったセリフは印象的でしたね。
「あなたはただの器?」
ここだけ取り出すと「器って何?」とよくわかりません。
この点に関しては小説の方に詳しい記述があります。
三隅に関わった人は、三隅に対して「まるで空っぽの器だ」という印象を抱いています。
自発的な激情などなく、ただ「器」に「何か」を入れて行動する人間のようだと。
今回の事件でいえば、三隅の器に入ったのは「咲江の殺意」
咲江が三隅に対してどの程度「父親を消してほしい」と伝えたのかは憶測の域を出ませんが、三隅を突き動かしたのは、もしかしたら「咲江を救いたい」「父親を裁きたい」という意志ではなく、ただ単に「器に入った殺意」だったのかもしれません。
ただし、三度目の殺人に関してだけは、三隅は他人の『何か』ではなく、自らの意思で器を満たしました。
その代わり、今度は重盛が自分の「器」に三隅の殺意を入れることになったのですが……
重盛は三隅と出会ってから明らかに変貌しています。以前の三隅なら負けると分かっていて三隅の否認の乗ることなどしなかったでしょう。また、作中では三隅と重盛が「似た者同士」であることが匂わされています。三度目の殺人の加害者は三隅と、そして重盛なのです。小説には重盛が「自分が三隅の命を奪った」と自覚して愕然とするシーンがあります。
三隅と咲江の「本当の姿」とは?
小説を読んで私が頭を悩ませたのは「何が嘘で何が本当なのか?」という点です。
例えば
- 三隅は生まれつきの異常者なのか、咲江を救おうとしているだけの常人なのか?
- 咲江はただの被害者なのか、事件の黒幕なのか?
などなど、作中には「どっちなのか?」と考え込んでしまうようなポイントが多く、それを見極めることは困難でした。
しかし、映画を観ることによって、私の中に一つの解釈が生まれました。
『それら2つは矛盾なく両立するのではないか?』
つまり、三隅は「生まれつき人の命を奪える側の人間」であり、なおかつ「(娘のように思っている)咲江を守りたいと思う人間」でもあるという解釈です。
一見矛盾しているように思われますが、よくよく考えてみれば「犯罪者には1ミリの良心もない」と考えるほうが不自然です。
この解釈の仕方は、咲江にも当てはまります。
咲江は「干渉の程度こそ不明だが、三隅に父親を始末させた人間(罪人)」であり、なおかつ「三隅を慕っていて、三隅を助けたいと心から願う人間」でもあったのでしょう。
咲江は最後まで「自らの罪」を告白しなかったことになりますが、だからといって三隅を救いたいという気持ちが打算や嘘だということにはなりません。
三隅の家で笑顔の咲江が目撃されていたことからも、2人の関係は良好だったことがうかがえます。
きっと咲江と三隅は、お互いに父や娘の姿を重ねていたのでしょう。
だからこそ
- 三隅は咲江を害する父親を裁いたし、咲江を守るために証言を変えた。
- 咲江は自分が傷つくことを恐れずに、三隅のために性的暴行のことを告白しようとした。
それこそが、2人の真の姿だったのではないでしょうか。
この解釈だと咲江は保身のために自らの罪を黙っているように見えますが、罪の告白は「三隅の行動を無にすること」と同義です。それに、そのことを告白したとしても三隅が実行犯であることは変わりません。だから咲江は黙っているしかなかったのではないでしょうか。
「罪」を示す十字架
作中ではしばしば「十字架」が登場します。
例えば、三隅はわざわざ被害者(咲江の父親)の遺体を十字架の形にしてから燃やしていますね。
一見すると「供養している」ようにも見えますが、本当の意味合いは「罪」を示すことだったのではないかと私は解釈しています。
罪人は十字架を背負ってこの世を去る。
つまり、作中に登場する十字架は「罪の証」
そのように仮定すると、実はとても面白くなる場面があります。
雪の中に重盛、三隅、咲江が仰向けで寝ている場面。
このとき重盛は「大の字」で寝ていますが、三隅と咲江は足を閉じて「十字架」のような形で寝ています。
十字架は、罪人の証。
このシーンを見て、私は「やっぱり咲江にも罪がある」と確信しました。
カナリアの比喩
三隅が1羽だけ逃がして、あとは息の根を止めて処分してしまったペットのカナリア。
檻の中で飼われている鳥は「罪人」を彷彿とさせます。
であれば、三隅が1羽だけ逃がしたカナリアは、きっと咲江だったのでしょう。
罪人でありながら、自由な空へと帰る美しいカナリア。
三隅の「咲江だけは絶対に守り抜きたい」という想いが透けて見えるようだな、と思いました。
そう考えると、三隅に判決が下った後の、このシーンについても見方が変わります。
以下、小説より一部抜粋。
三隅は咲江にのみ見えるように、手錠をはめられている両手を重ね合わせて、そこに視線を落とした。まるでその手のひらのなかにカナリアが包まれているように。
そして歩きながら、その手を開いた。手のひらから逃れ、はばたくカナリアを三隅は目で追っている。
法廷の中を飛び回り、扉の外へと自由にはばたくカナリアを。
三隅はカナリアを追って宙を見たまま、退廷していった。
三隅が解き放ったカナリアは、やはり咲江だったのではないでしょうか。
まとめ
映画「三度目の殺人」がついに公開!
ちょっと考えさせられるというか、難しい内容になっているので、個人的には小説版と映画のWチェックがおすすめです!
今回、私は「小説 → 映画」という順番で作品に触れたのですが「両方見て初めて全体がつかめる」という印象を受けました。
まだまだ伏線や裏テーマが隠れている気がするので、おそらくもう一度映画なり小説なりをチェックすれば、また新しい発見がありそうな気がします。
それだけ複雑で内容の濃い作品だということですね。
今回の私の考察が必ずしも正しいとは限りませんので、ぜひ作品に触れてあなただけの『真実』を探してみてください!
映画『三度目の殺人』の配信は?
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すごい解説‼明瞭解明。解りやすいです。私は映画しか観ていませんが、そこまで深いところは分かりませんでしたが、解説を読ませていただき、なるほどーとうなづくところばかり。しかも的を得ている解釈です。もう一度、いえ、何度も見ようと思います。ありがとうございます‼
重盛も最後十字架の形をした四つ角の真ん中に立ってましたね。