東野圭吾「パラレルワールド・ラブストーリー」が映画化!
https://youtu.be/jSqmag5K9O0
玉森裕太さんが主演して話題になりました。
『彼女は俺の恋人か。それとも親友の恋人か』
この帯文句の通り、今作のジャンルは「恋愛」&「ミステリー」
鍵になるのは「パラレルワールド」の存在なのですが、その正体は「○○○○」であることが結末で明かされます。
そして気になる結末は、あまりにも切なすぎる展開に…!
というわけで今回は映画化された小説「パラレルワールド・ラブストーリー」のネタバレ解説(と感想)をお届けします!
奇妙な三角関係の結末は…!?
Contents
ネタバレ解説
タイトルが示すように、この作品には「2つの世界」が登場します。
1つめの世界
麻由子(ヒロイン)の恋人は智彦(親友)
2つめの世界
麻由子の恋人は崇史(主人公)
それぞれの世界が提示される順番的に、読者はごく自然に「1つめの世界=現実の世界」「2つめの世界=パラレルワールド」というふうに思い込んでしまいます。
しかし、小説を読み進めていくとどんどん「ヒント」が出てくるので、そのうちに読者は「あれ?なんか違うぞ?」と気づきます。
以下は、ヒントの一例。
・2つの世界には『時間的なズレ』がある。最初の段階で「2つめの世界」は「1つめの世界」の1年後。
・「2つめの世界」の崇史には『記憶の欠落』がある。特に智彦や麻由子のことに関する記憶があいまい。
・「2つめの世界」の崇史は「1つめの世界」のことを夢に見る。
・崇史と智彦は「次世代型の仮想現実」について研究している。特に智彦は『脳や記憶』に関する研究を行っている。
ここまで情報が揃えば、もう答えは目の前ですよね!
すでにお気づきかとは思いますが、この作品に「パラレルワールド」は登場しません。
「2つの世界」の正体は「過去」と「現在」です。
もう少し情報を加えると、こんな感じになります。
・「1つめの世界」…過去(現在の崇史が思い出している『記憶』)。麻由子の恋人は智彦。崇史は智彦に嫉妬している。
・「2つめの世界」…現在。記憶に欠落のある崇史が思い出していく記憶こそ「1つめの世界」。麻由子は崇史の恋人…のように見える。智彦は行方不明。
というわけで「パラレルワールド」の正体はわかりましたが、まだまだ謎は残っていますよね。
・なぜ、現在の麻由子は崇史の恋人になっているのか?
・なぜ、現在の崇史の記憶は欠落しているのか?
・現在の智彦はどこで何をしているのか?
・過去に何があったのか?
物語が中盤に差し掛かると、さらに謎は増えていきます。
・崇史を監視する何者かの存在。
・記憶を取り戻していくにつれて消えていく周囲の人々。麻由子すらも失踪する。
・ある時期を境に失踪した「篠崎」の行方。篠崎は智彦たちと同じ研究班の人間だった。
これらすべての謎を解く鍵は…ズバリ『智彦の研究』!
果たして智彦は何について研究し、何を完成させたのでしょうか?
智彦の研究
結論から言えば、智彦の研究テーマは『記憶の改編』です。
過去の記憶を書き換え、別の記憶を与える研究です。
崇史はこの記憶改編を受け、過去の記憶を封印されました。
本物の記憶の代わりとして崇史に新しく与えられたのは『最初から崇史と麻由子こそが恋人同士だった』という記憶。
だから「パラレルワールド(本当は現在)」の崇史は麻由子と同棲していることを「当たり前のこと」だと認識していたんですね。
本来の計画では、崇史は『偽の記憶』に疑いを持つことなく、そのままずっと麻由子との同棲生活を続けていくはずでした。
ところが、崇史が自力で『本物の記憶』を思い出し始めたことで事態は一変!
『黒幕』もいろいろと対応に追われることになりました。
※麻由子の失踪もその一環
さて、崇史の記憶についてはこれで説明がつきましたが、そのことによって新たな謎が出てきましたね。
『そもそも、なぜ崇史は記憶改編を受けたのか?』
もうバラシてしまうと、『黒幕』の正体は崇史たちが所属する企業「バイテック社」です。
崇史を監視していたのも、麻由子を失踪させたのも、智彦や篠崎の失踪を隠ぺいしていたのも全部バイテック社の仕業。
となると、普通は「崇史はバイテック社にとって都合の悪い秘密でも知ってしまったのかな?」と思いますよね。
しかし、それは東野圭吾一流のミスリード!
結論から言えばバイテック社は悪の企業でもなんでもなく、むしろ『正しい目的』のためにすべてを操作していたのです。
- バイテック社の目的とは?
- 崇史が記憶改編を受けた本当の理由とは?
- 智彦の行方は?
すべての始まりは崇史、智彦、麻由子…3人の三角関係。
友情と恋愛感情を秤にかけ、最後に崇史が出した答えこそが悲劇を呼んだのでした。
※補足
現在の麻由子は「崇史の監視者の1人」でした。
崇史と同棲していたのは本当に恋人だったからでも、記憶改編を受けたからでもなく、崇史を監視するため。
崇史の記憶が戻ったタイミングで失踪したのも、バイテック社の意向によるものでした。
ただ、だからといって麻由子に崇史への恋愛感情がなかったかというと、そういうわけでもなくて…。
複雑な三角関係【前編】
物語序盤(過去)における3人の姿勢はそれぞれ以下の通り。
崇史
麻由子のことが好きだが、智彦の恋を応援したい気持ちもある。
智彦
麻由子のことが好き。
女性との交際経験が少ない智彦にとって、麻由子はとても大事な存在。
このチャンスを逃したらもう二度と麻由子ほどの女性とは出会えないと思っている。
麻由子
智彦の恋人。
智彦と麻由子は恋人同士。崇史と智彦は無二の親友。
ここまでは何の問題もありません。
ところが、崇史が親友の恋人のことを好きになっちゃうもんですから事態は混乱していくわけです。
崇史にとって智彦は中学生時代から社会人になった今までずっと一緒だったという兄弟同然の大親友!
智彦には片足にハンデがあり、内気な性格も手伝って女性からあまりモテないものですから、崇史はずっと「親友のことをちゃんと見てくれる恋人が現れるといいな」と思ってきました。
そうして現れた麻由子は美人で聡明で、まさに智彦のパートナーとしてはこれ以上望むべくもないほどの優良物件!
ただし、運命のいたずらというべきか、最初に智彦から恋人を紹介されたその時からすでに、崇史にとって麻由子は「初対面の親友の恋人」ではありませんでした。
この三角関係の本当のスタート地点は、崇史がまだ大学院に所属していた1年前。
崇史はいつも山手線に乗っていたのですが、並行して走る京浜東北線に乗っている女性に一目惚れしていました。
2人は2枚のガラス越しに何度も顔を合わせていて、崇史としては「向こうも自分のことを見ているのでは?」と思っていました。
結局、崇史がその女性と直接言葉を交わす機会は訪れず、そのまま就職を機に2人の接点はなくなってしまったのですが、崇史にとって名前も知らないその女性は今でも思い出すほど好きな存在のまま。
何を隠そうその女性というのが…麻由子だったんですね。
物語終盤の崇史のセリフにもあるように、麻由子のことを好きになったのは崇史の方が先、というわけです。
とはいえ、普通に考えれば、ちゃんと手順を踏んで恋人になった智彦と麻由子の間に割って入ろう…とはなりませんよね。
親友から恋人を奪うことになってしまいますし、一目惚れした相手とはいえ崇史はそれまで麻由子と話したことすらなかったのですから。
ただ、この場合、崇史と智彦の距離が近すぎたのが災いしました。
何も知らない智彦は無邪気に「3人での行動」を楽しもうとしてしまったんですね。
さらに麻由子も1年遅れで2人と同じ職場(MAC)に配属されたものですから、崇史は職場でもプライベートでも麻由子と顔を合わせることになってしまいました。
すると、どうなるか。
いつもいつも目の前で親友と好きな女性がいちゃついているのを見せつけられ、崇史の胸の内には嫉妬心と敗北感が広がっていきます。
これが後に爆発し、『智彦の失踪』や『崇史の記憶改編』へとつながっていくことになります。
※補足
最後の最後まで隠されていた秘密の一つに『結局、麻由子は向かいの電車に乗っていた崇史のことを見ていたのか?』というものがあります。
これが「YES」か「NO」かによって、3人の関係性はかなり変わってきますよね。
「NO」なら崇史の一人相撲ということになりますが、「YES」だった場合は複雑です。
麻由子にとっても「恋人の親友に会ったら、その人は気になっていた相手だった」ということになります。
その場合、智彦がめちゃくちゃ可哀想なことになるわけですが…。
複雑な三角関係【後編】
友情と恋愛感情の二者択一。
崇史が選んだのは、恋愛感情の方でした。
つまり崇史は「親友を裏切り友情を消滅させてでも麻由子を手に入れたい!」と思ったわけですね。
物語のラストにはこんな会話もあります。
「僕から親友と恋人を奪うことについて、崇史はどう思ってるんだ?」
「仕方がない、と思っている。俺だって苦しんだけど、結局麻由子を諦められなかった」
崇史、実はかなりダメなタイプの人なのかもしれません(笑)
で、肝心の麻由子の気持ちはというと…同じくラストの会話を見てみましょう。
「すべて崇史から訊いた。君の本心を知りたい。君が好きなのはどっちなんだ。僕かい?それとも崇史かい?」
「そんなこと、いいたくない」
「そうか…いいたくない、か」
明言こそしていませんが、この麻由子の答えを意訳するとこうなります。
『本当は崇史の方が好きだけど、智彦のことを傷つけたくないから言いたくない』
実は麻由子はかなり早い段階で崇史から気持ちを告白されていたのですが、ずっとそのことを智彦に隠していました。
理由は「崇史と智彦の関係を壊したくないから」
「3人でいるのが好きだった」とは麻由子の言です。
とはいえ、状況証拠的にも麻由子の本命が崇史の方だったのは明らか。
ちょっと例を挙げてみましょう。
・崇史から告白されたときの反応…「困るわ。でも…悪い気はしてないの」
・崇史から迫られたとき、断り切れずにベッドをともにした。一方、智彦との肉体関係はなし(ホテルへの誘いを断る)
・ラストの智彦の証言「彼女の気持ちが、崇史のほうに向いていることに、以前から気づいていた」
さらにダメ押しでもう一つ。
「あの時君は、向こうの電車から、俺のことを見ていたんだろう?」
「見ていたわ」
ということで、実は麻由子にとっても崇史は最初から「恋人の親友」というよりは「気になっていた相手」だったのです。
ああ、智彦が可哀想…。
じゃあ、なんで麻由子が崇史からの告白をOKしなかったかというと…まあ、普通に考えれば難しいですよね。
それこそ智彦から親友と恋人をいっぺんに奪うことになるわけですから。
しかも、智彦の足のハンデのことを思えば、なおさら罪悪感が湧いてくるでしょうし。
麻由子は崇史のように「仕方がない」とは割り切れなかったんですね。
結末は?
物語のラスト、智彦はついに崇史と麻由子の本心を知ってしまいます。
智彦にしてみれば「親友から裏切られ、恋人も失う」という絶望的な状況。
正直、智彦が憎しみから2人に襲い掛かっていたとしても「まあ、そうなるよね」と納得できるレベルです。
しかし、智彦は深く悲しみこそすれ、2人のことを憎んだり恨んだりはしませんでした。
それどころか、智彦は裏切られたと知ってもなお、崇史との友情を保とうと考えたのです!
めちゃくちゃ良い奴!
とはいえ、さすがに「じゃあ麻由子は譲るよ。僕のことは気にしないで」とはいきません。
そこで智彦は崇史に「自分の記憶を改編してほしい」と頼みます。
この絶望的な状況を忘れ、「最初から麻由子とは恋人じゃなかった」という記憶に書き換えようというのです。
智彦の強い決意を知り、崇史はその提案に乗りました。
しかし、結果から言えば記憶改編は失敗に終わります。
実は記憶改編技術には未解決の欠点があり、ある条件下では被験者を「スリープ状態」にしてしまうことがわかっていました。
「スリープ状態」とは永遠に目覚めない眠り。
智彦はわざと条件を整え、自らを「スリープ状態」にしたのです。
その理由は2つ。
1.同じくスリープ状態に陥ってしまった1人目の被験者(=篠崎)を救うためのデータをとるため
2.自分と崇史と麻由子。3人の関係を修復するため。
以下は、智彦が最後に崇史に宛てて書いた手紙の一部です。
『僕が少々長い眠りについている間に、崇史と麻由子は結ばれればいい。僕の計算によれば、僕の記憶改編は行われているはずだ。目覚めた時には、心の底から君たちを祝福できるだろう。どうか僕の代わりに彼女を幸せにしてあげてほしい。
記憶改編システムは、まともに扱えばトラブルは起きない。これは僕の希望だけど、君たちもこの一年の記憶を変えてくれないだろうか。そうすれば、また昔のように付き合える。
たとえこの一年の過去を変えたとしても、僕たちの友情には影響ないのだから。
目覚めた時に会おう。それまでさようなら』
この後、崇史は智彦の手紙通りに記憶改編を受けました。
※智彦の言葉に従ったというより、自分がしてしまったことへの後悔から逃げるため、という理由が強いですが
ここが物語の終わりであり、始まりでもあります。
実は智彦は崇史に『スリープ状態を解除するために必要なデータ』を渡していたのですが、崇史はうっかりそれに気づかず記憶改編を受けてしまったんですね。
崇史がデータの在り処ごと記憶を失ってしまったものですから、このままでは智彦や篠崎を助けることができません。
そうなると困るのはバイテック社。
バイテック社は崇史に記憶改編を施した後にこの事実に気づいたのですが、もはや手遅れでした。
崇史に記憶を取り戻させようにも、直接「おまえの記憶は偽物だ。さあ思い出せ」などと言おうものなら、崇史までもがスリープ状態に陥ってしまいかねません。
もはや万事休すか…と思われたのですが、崇史は自力で記憶を取り戻し始めます。
そこでバイテック社は崇史に監視をつけ、真実を知る者を崇史から遠ざけることにより、崇史の自然な記憶回復を待つことにしました。
麻由子が記憶改編を受けずに崇史の監視者となったのは、智彦を助けるという目的があったため。
というわけで、物語は冒頭へ。
「麻由子は自分の恋人だけど…あれ、智彦の恋人だったっけ…?記憶があいまいでわからない…」
という状態の崇史が出来上がったわけですね。
この種明かしをもって、小説「パラレルワールド・ラブストーリー」の物語はおしまい。
- このあと智彦は無事に目覚めたのか?
- 記憶を取り戻した崇史の今度は?
- 三角関係はどうなるのか?
などの気になる「その後」は描かれていません。
読者の想像におまかせ、というタイプの結末ですね。
この結末に関してはいろいろと思うところがあったので、そちらについてはこの後の感想で書いていきたいと思います。
【おまけ】時系列順
・崇史(大学院生)と麻由子が電車で出会う。崇史、麻由子に一目惚れ。
・崇史と智彦、バイテック社に就職。教育と研究を兼ねた学校「MAC」に入学。
・智彦、麻由子と出会い恋人になる。
・交際開始から約半年後、智彦が麻由子のことを崇史に紹介する【物語冒頭】
・麻由子がバイテック社に就職。1年下の後輩としてMACに入学。智彦と同じ研究チームに配属される。
・智彦、記憶改編技術を発見。
・崇史、麻由子に告白。
・秋ごろ、記憶改編の実験台になっていた篠崎が倒れる。表向きは失踪扱いになったが、実はスリープ状態に陥っていた。
・崇史、麻由子を抱く。
・崇史と智彦、MACを卒業。智彦、スリープ状態に陥る。
・崇史、記憶改編を受ける。
~ここまでが「過去」~
~ここからが「現在」~
・崇史、少しずつ記憶を取り戻していく。
・崇史、すべてを思い出す。智彦を救うためのデータをバイテック社に渡す。
【END】
感想
とにかく、この小説に対して一番言いたいのは「えっ、そこで終わんの!?」ということです。
崇史がすべての記憶を思い出し、これで智彦たちも無事に助かりそう…この展開に文句はありません。
でも、知りたいのは「この後どうなったのか」じゃないですか!
もちろん全体的にはすごく面白かったし、読者の想像におまかせパターンもありだとは思うのですが、この作品についてはものすごく「もやもや」が残りました。
なんとなく「ハッピーエンドにはならないんだろうなぁ」と思うものの、具体的に「どんな展開になるのか?」がいまいち想像できないのが原因でしょうか。
このままでは消化不良な感じになりそうなので、私なりに少し「結末の先の未来」について考えてみることにしますね。
「パラレルワールド」の謎が解明された今、残る問題は明らかに「ラブストーリー」の方です。
『真の結末』を想像してみる
崇史がデータの在り処を思い出したことで、智彦はおそらく目を覚ますでしょう。
きっと記憶改編は成功していて、智彦は麻由子が自分の恋人だったことを忘れているはず(※)
※崇史が自力で記憶を思い出したように、智彦もやがては記憶を取り戻すのでは?という疑問は残りますが…
一方、崇史は記憶を取り戻したことで『大事な親友を裏切った』という罪の意識をも取り戻しているはず。
ならば、そのまま素知らぬ顔をして麻由子と付き合っていけるはずもありません。
- もう一度(改良された)記憶改編を受ける
- 麻由子とは別れる
すぐに思い浮かぶ選択肢としては、こんなところでしょうか。
前者であれば『崇史・麻由子・智彦の3人ともが記憶改編を受ける。偽の記憶に基づいて麻由子は崇史の恋人として、智彦は崇史の親友として、幸せな三角関係を保ったまま生きていく』という『真の結末』が考えられます。
これはなかなかありえそうな未来ではないでしょうか。
一見すると大団円のようにも思えますが、どこか「それは本当の幸せなのか?」という疑問が残るイヤミス的な結末…。
ハッピーエンドではないものの納得できるラストです。
では、後者の場合はどうでしょう?
崇史は罰を受けられていいかもしれませんが、智彦は「え、なんで崇史と麻由子別れてんの!?」という状況になりますよね。
となると『崇史・麻由子はそれぞれ智彦から距離を置く。もちろん崇史と麻由子も接点を持たない。3人はバラバラになり、誰も幸せにはなれない』という『真の結末』になるのではないでしょうか。
これは結構しんどいラストですが…オチとしては悪くありません。
さっきよりさらにイヤミスな結末ですが、「そういう作品だったのね」と納得はできます。
ただ、智彦は可哀想すぎますけどね…。
せっかく身を挺して3人の関係を保とうと頑張ったのに、結局報われないだなんて…。智彦は何も悪くないのに…。
というわけで、結果としては2つの『真の結末』を想像することができました。
やはりどちらもイヤミスな結末でしたが、納得できるラストであり「もやもや感」は解消できそうです。
しかし、なぜ東野圭吾さんはここまで描いてくれなかったのでしょう?
もしかして『真の結末』を読者に想像させるところまでが「パラレルワールド・ラブストーリー」だったということでしょうか。
だとしたら、私はこの作品を120%楽しむことができたということになりますね。
読者の数だけ、それぞれ違った『真の結末』が想像される…それもまた面白い作品のカタチなのかもしれません。
もし小説を読んだり、映画を観たりする機会があれば、是非あなたなりの『真の結末』を想像してみてください。
きっと私とは違った『真の結末』が見えてくることでしょう。
※以下の記事では結末までの詳しいあらすじを紹介しています。3人のセリフや心情も入っているので、未見・未読の方はあわせてどうぞ!
【余談】3人の主要登場人物について思ったこと
最後に「これだけは言っておきたい!」ということを少しだけ書いて、感想を終わりたいと思います。
★崇史
気持ちはわかる…気持ちはわかるけど親友の彼女奪っちゃだめでしょ!
告白でもギリギリアウトだと思うけど、強引に抱くってのはどうよ。
「本当は麻由子も自分のことが好きなんだ」と思ってるからって、一歩間違えば犯罪だよ。
「好きになったのは自分の方が先」って小学生か!
友情よりも仕事よりも異性が大事って、イタリア人か!
いい大人なんだからさぁ…分別をわきまえようよホント…。
崇史自身は悪人じゃないんですが、それでもこの物語においては諸悪の根源なんですよねぇ。
★智彦
本当にかわいそう。
どう考えても何も悪くないのに、一番傷ついて損をしたのは智彦なんですよね。
研究者としては天才で、自分を裏切った崇史に「麻由子を幸せにしてあげてほしい」と言える人徳者。
なのに足にハンデがあるというだけで異性からモテないだなんて…不憫すぎる。
せめて「結末の先の未来」では誰よりも幸せになってほしい、そう願わざるを得ません。
きっと麻由子よりもふさわしいパートナーが現れるよ…大丈夫だよ…でも、もし記憶が戻ったら崇史との関係はちょっと考えた方がいいと思うよ…。
★麻由子
実は小説の冒頭には「崇史が麻由子に会うためにいつもとは逆の電車に乗ったとき、麻由子はいつも崇史が乗っている電車の中にいた」という記述があります。
これを「実は麻由子も崇史のことが好きだった(から同じタイミングで反対の電車に乗っていた)」と解釈すると、ちょっと麻由子に対する印象が変わってきませんか?
なんというか「君にはもうちょっとやりようがあっただろうに!」と思うんです。
例えば、麻由子が早い段階で崇史の気持ちに応じて、智彦と別れておけば、まだ傷は浅かったのではないでしょうか。
もちろん「いやいや、智彦がめちゃくちゃ傷つくし親友同士の友情を壊すことになるからそれはできないよ!」という事情があったからそうはならなかったわけですが…じゃあ崇史に抱かれちゃダメでしょ。初志貫徹してくださいよ。そんなん崇史が智彦に言っちゃうに決まってんじゃん。
崇史が諸悪の根源で、智彦が完全な被害者だとすると、麻由子は実に中途半端な立ち位置であるように思われます。
電車時点の気持ちは不明ですが、智彦からの誘いや求婚を断っていることからも、途中から麻由子の気持ちが崇史の方に傾いていたのは明らか。
「2人の友情を壊したくない。3人でいるのが楽しい」というのが麻由子の主張でしたが、それが永遠に続くわけないことくらい、少し考えればわかることでしょう。
結局、麻由子は智彦を裏切る加害者になりたくなくて、ずっと結論を先送りにしていただけなのではないでしょうか。
ある意味では、その麻由子のどっちつかずな態度が悲劇を呼び起こしたといえなくもありません。
まあ、崇史と同様に麻由子自身が悪人というわけではないんですが…「なんだかなあ」という感じです。
まとめ
今回は東野圭吾「パラレルワールド・ラブストーリー」のネタバレ解説や感想などをお届けしました!
本文の方では触れなかったのですが、この小説が発刊されたのは1995年。
その時代ですでに「仮想現実」を題材に選んでいるという点からしてすごいですよね。
もちろんテーマだけではなく、それぞれの思惑が交錯する三角関係(過去)や終始不穏な雰囲気の漂う記憶探し(現在)も実におもしろかったです。
「そこで終わり!?」という感じの結末にはちょっと驚きましたが、「その後どうなったのか?」を想像してみるのも意外と楽しいものでした。
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個人的には、結末は、3人とももう一度記憶改編を受けて、崇史と智彦は元通り親友同士で麻由子はどちらとも恋愛関係のないただの友人、もいうかたちがいいかなぁ、と思いました。
それにしても、東野圭吾氏、素晴らしいですね!
お疲れさまです。
仮想現実、記憶テーマの小説について。
当時(それ以前、かなり昔)から、欧米はもとより、日本でもけっこうありまして。メジャーなところでは、「クラインの壷」(岡嶋二人)とか。
いろいろ調べてみてください。
古典では、「ナル(非)Aの世界」とかですかね。50年以上前で、衝撃のテーマでした。人間を「自分自身」たらしめているのは何かを、考えさせられました。
考察楽しく読ませていただきました!
プラスαのところを読んでて、読者が色々な結末を考えてるその世界がパラレルワールドみたいだな、なんて思いました笑
東野さんの小説の世界観はどれも好きで、もっと書いて欲しいです