感動・ヒューマンドラマ

「坂の途中の家」あらすじとネタバレ感想!新米ママの共感度500%!

またしても衝撃的な小説と出会ってしまいました!

『娘を殺した母親は、私かもしれない……』

そんなショッキングな売り文句の帯が巻かれていたのは角田光代「坂の途中の家」

柴咲コウさん主演でWOWOWドラマ化することでも注目されている作品ですね。

柴咲コウさん演じる主人公は3歳になる娘の育児にへとへとの新米ママ。

補充裁判員として「乳幼児の虐待死事件」の裁判を目の当たりにする日々の中、主人公は被告人に自分の姿を重ねていく……という物語です。

もうね、これが怖いのなんの!

幽霊とか肉体的な痛みとかとは一線を画する、あまりに身近すぎるサスペンス!

今回はそんな「坂の途中の家」のあらすじを紹介しつつ、感想をお届けしていきたいと思います!

※当記事には「坂の途中の家」のネタバレが含まれます。ご注意ください。

「坂の途中の家」あらすじ・ネタバレ

山崎里沙子(33)はどこにでもいるふつうの主婦。

夫の陽一郎(35)は爽やかな性格で、誰からも「いい人と結婚したね」と祝福された。

もうすぐ3歳になる娘の文香は天使のように可愛らしい。

誰がどう見ても非の打ちどころのない幸せな家庭。

……けれど、本当にそうなのだろうか?

 

被告人・安藤水穂

とつぜん補充裁判員に選ばれた里沙子は、十日間も東京地方裁判所に通わなければならないことになってしまう。

担当するのは「乳幼児の虐待死事件」

被告人・安藤水穂(36)の顔は以前ニュースで見たことがあった。

生後8か月の長女・凛ちゃんを水のたまった浴槽に落として絶命させた、という事件だ。

8か月といえば夜泣きが酷い時期だし、はじめての育児なら疲労もピークに達していたことだろう。

でも、だからといって我が子の命を奪うだなんて……。

 

二人の水穂

検察が追及する水穂と、弁護人が擁護する水穂は、まるで別人のようだった。

一方が語る水穂は『ろくに育児もせず、子育てに協力的な夫には当たり散らしていた』という、ろくでもない悪女。

もう一方が語る水穂は『夫の暴言に怯え、母としての自信をすっかり失うほど追い詰められていた』という、気の毒でかよわい女性。

いったいどちらが本当の水穂なのだろうか?

水穂の夫の寿士は被害者だったのか、加害者だったのか?

自己投影

最初は同じ母親として水穂を軽蔑していた里沙子だったが、裁判が進んでいくにつれて被告人に同情するようになっていく。

なぜなら、里沙子にも身に覚えがあったから。

文香の夜泣きが酷いころ、ついイライラして文香を床に落としてしまったことがあった。

「大丈夫?」という夫の言葉の裏に「おまえは頼りない母親だ」というあざけりが潜んでいるような気がして自信を失っていったこともある。

きっと育児をしたことのない人間には理解されないだろう。

赤ん坊と四六時中いっしょにいることがどれだけのストレスになり、どれだけ母親の余裕を奪うのか。

 

里沙子自身の問題

公判が進むにつれて、里沙子自身も精神的に追い詰められていった。

慣れない裁判に戸惑っている、というだけではない。

もしかしたら水穂がそうであったように、里沙子もまた夫や義母の言葉の裏に『悪意』を感じとるようになったのだ。

「大変なら裁判員辞退したら?」という言葉は本当にただの心配なのだろうか?

その陰に「おまえは人並み以下の人間だ」というあざけりが隠れてはいないだろうか?

被害妄想だと笑われるかもしれない。

けれど、里沙子にはそれが被害妄想なのかどうか確かめる方法はない。

 

事件

もうすぐ3歳になる文香はイヤイヤ期の真っ最中で、ことあるごとに「イヤ! ママ嫌い!」と泣き叫ぶ。

構えば構うほどイヤイヤが酷くなるとわかっているから、里沙子は文香を無視することが少なくない。

その日も文香が帰り道でぐずりだしたので「おいてくよ! ママ先に行ってるからね!」と置き去りにするふりをしていただけだった。

実際には曲がり角からずっと文香の様子を見ていた。

ああ、だけど、なんということだろう。

たまたま早く帰ってきた陽一郎が夜道でひとり泣いている文香を見つけてしまったのだ。

ドキリと心臓が高鳴る。

あわてて出て行ってももう遅い。

詳しく理由を説明すればするほど嘘くさくなってしまう。

陽一郎は面と向かって怒鳴るようなことはなかったが、決して里沙子の言い分を耳に入れようとはしなかった。

そして次の日。

いつものように義父母の家に文香を預けに行くと「今日は泊まっていきなさい」という。

聞けば陽一郎から何か言われたらしい。

それを知った瞬間、カッと胸が熱くなる。

陽一郎はなんといったのだろう?

昨日のことを告げ口したのだろうか?

「あいつが娘に何かするといけないから見張っていてほしい」とでも言ったのだろうか?

里沙子はまた夫や義母から「おまえには母親なんてつとまらない」と言われている気がした。

恐怖

裁判も終わりにさしかかる頃、今度はこんな事件があった。

つい考え事をしていて、電車の中に文香を置き去りにしてしまったのだ。

文香を乗せた電車が里沙子を置いて遠のいていく。

里沙子(私はいったい、なんてことを……!)

崩れ落ちた里沙子は駆け寄ってきた駅員に事情を話し、次の駅で無事に文香は保護された。

里沙子は泣きながら「あーちゃん、ごめんね。許してくれる?」と娘を抱きしめる。

家までの帰り道、里沙子はずっと恐怖に震えていた。

文香を置き去りにしてしまったことに対しての恐怖ではない。

絶対にこのことを陽一郎に知られてはならない、と何よりも先に考えている自分がおそろしかった。

 

悪意の正体

ふと、里沙子は思った。

憎しみではなく、愛だったのではないか。

相手をおとしめ、傷つけ、そうすることで自分の腕から出て行かないようにする。

愛しているから。

そういう愛しかたしかできないから。

そう考えると、この数日のうちにわきあがった疑問のつじつまがあっていく。

陽一郎は不安だったのだろう。

自分の知らない世界に妻が出ていって、一家のあるじが今まで思っていたほどには立派でもなく頼れるわけでもないと気づいてしまうことが、不安だったのだろう。

だから、私をおとしめることで威厳を保とうとした。

こんな簡単なことに、どうして気がつかなかったのだろう。

きっと私は考えることを放棄していたのだ。

面倒を避けて楽をするために、私もまたあの人が望む愚かでちっぽけな人間を演じていたのだ。

そのような愛しかたしか知らない人に、愛されるために。

これから陽一郎との関係をどうするべきか、その答えはまだない。

離婚するかもしれないし、しないかもしれない。

ただ、先のことを考えるとおそろしい。

陽一郎が彼の愛しかたで、妻である自分ばかりか、文香まで愛することが……。

 

判決

「被告人を懲役九年に処する」

結局、安藤水穂がどんな人間だったかはわからないまま裁判は幕を閉じた。

判決では育児ノイローゼで精神的に追い詰められていたことに同情の余地はあるとしながらも、責任能力はあった、娘の命を奪ったことは許されないという旨が述べられた。

法廷から出て行く水穂の後ろ姿を見ながら、里沙子は涙を流す。

あれは、もうひとりの私だった。

自分の人生をコントロールできなかった私。

母親として生き抜くことができなかった私。

なにかひとつボタンをかけちがえていれば、裁かれていたのは私だったのかもしれない。

なにかひとつ、ささいな違いがあれば、彼女と私は笑いながら話ができていたのかもしれない。

さようなら、もうひとりの私。

<坂の途中の家・完>

「坂の途中の家」の感想【ネタバレ注意】

わかたけ
わかたけ
あらすじどうだった?
ぱんだ
ぱんだ
なんかよくわかんなかった
わかたけ
わかたけ
うっ……

実際、「坂の途中の家」はハッキリしない物語だと思います。

被告人の水穂がどんな人間だったはわからずじまい。

里沙子は最後に「悪意の正体は愛だった」と気づきますが、それから生活がどのように変わっていくのかは不明。

そもそも、『悪意』なんて里沙子の思い込みに過ぎなかったという可能性もあります。

だから、正直にいえば小説の最後の1ページを読み終わったとき、私は読了の達成感や充実感はあまり感じませんでした。

ただ、「じゃあ、面白くなかったの?」と聞かれれば答えは「NO」です。

「坂の途中の家」には人間の心理を深くえぐるような描写がたびたび登場します。

それらはまるで自分の心の中のドロドロした部分を突きつけてくるようで、読んでいて何度もドキッとさせられました。

その気持ちは、ちょうど解説の河合香織さんのこの言葉で表現されているようなものです。

以下、解説より一部抜粋。

本書を読み進めるうちに、私はこの小説は自分のことを書いているのだと強く思い込んだ。

私も幼児を抱えていて、虐待をしたのではないかと周囲に疑われることに怯え、説明すればするほど誤解は深まっていき、話す気力が失われるほどに苦しんだ時期がある。

どうして私のことを知っているのだろうと。

私には子どもはいませんが、それでも里沙子にどっぷりと共感しました。

そして陽一郎の言葉や里沙子の心情にゾッとしながら、夫婦の関係性やモラハラについて深く考えさせられました。

おもしろかった、というと誤解があるかもしれませんが「読んでよかった小説」「凄みのある小説」であることは確かです。

特に小さなお子さんのいる若いお母さんにおススメしたい一冊ですが、モラハラの問題を考えるにあたっては老若男女問わずに一読の価値がある本だと思います。

すぐそこにある不穏

特に印象深かった里沙子の自問に、こんなものがありました。

私は、果たして、文香を愛しているのだろうか。

もちろん愛していると思っている。

いなくなったらと考えただけで胸がふさがる思いがする。

でも、今日やこのあいだみたいな聞き分けのない態度を、毎日毎日、この先ずっとされ続けていても、それでも、文香を自分より大切なものと思えるだろうか。

かわいい、かけがえのない子どもだと思えるだろうか。

私が愛しているのは、聞き分けのいいとき限定の文香なんじゃないか。

この文章を読んだとき、私はハッとしました。

世の中には「母親はすべてを捧げて子どもを愛し、命をかけてでも守るものだ」という母親像が浸透しています。

これはつまり「母親とは自分よりも我が子を優先するべきものだ(子ども>自分)」という通念です。

でも、それってどうなんでしょう?

母親は聖女ではありません。

生身の人間です。

夜泣きやイヤイヤ期に直面したとき、思わずイラっとすることくらい、そりゃありますよ。

そんなことで「母親失格」なんてことにはならないはずです。

けれども、繰り返すようですが、それは世間一般の母親像からは外れているわけです。

特に男性が理想とする母親像とは。

だから世の旦那様は子どもに厳しくしているパートナーに向かって「ちょっと、やりすぎなんじゃないか」なんて言ってしまう。

自分は聞き分けのいいときの子どもしか相手にしていないくせに、聞き分けのないときの子どもの理不尽さなんか知りもせずに、「おまえは母親として劣っている。間違っている」と解釈できるようなことを言ってしまう。

たまったもんじゃありませんよね。

そんなとき「じゃあ、あなたがやってみれば?」と反論できるような奥さんならまだいいでしょう。

でも、世の中には「どうせ反論しても聞いてもらえない」と思ったり、言い返せなかったりする奥さんもいるはずです。

その結果、奥さんは「自分は母親として劣っているのではないか」と自信を無くし、不安になっていく……。

安藤水穂の事件は、この延長線上で起こったものだと私は思います。

安藤水穂の事件は、そして里沙子が体験した不安や疑心暗鬼は、決して対岸の火事ではありません。

それは誰の身に起こっても不思議ではないほど身近なものなのです。

この『気づき』に私は全身に鳥肌が立つほどゾッとしました。

(続く)

モラハラ加害者にならないために

(続き)

なにが一番おそろしいって、知らない間に自分が加害者になっているかもしれないということです。

世間一般の感覚からすれば、水穂の夫の寿士も、里沙子の夫の陽一郎も、決してダメな男(夫)ではありません。

むしろ、積極的に妻を気遣ったりしているぶん、「羨ましい」とすら思われるようなパートナーだといえるでしょう。

それでも2人の夫は、それぞれのパートナーを精神的に追い詰めてしまいました。

はたして寿士・陽一郎はモラハラの加害者だったのでしょうか?

それともすべては水穂・里沙子の被害妄想だったのでしょうか?

答えが当人たちのなかにしかない以上、私たちには本当のところはわかりません。

また、その真実を明かすことは重要なことではないように思われます。

大切なのは500ページにわたって里沙子に寄り添い続けた私たちが、何を受け取るかということでしょう。

モラハラに類する発言をしないようにする、なんて発想はズレています。

本質はいかに大切な人に寄り添えるか、ということではないでしょうか。

月並みな言葉を並べれば、相手への信頼・尊敬・相互理解。

結局のところ、これは「誰が正しくて誰が悪い」という話ではないのでしょう。

里沙子にも陽一郎にも水穂にも寿士にも、それぞれ至らないことがあったんです。

人間なんですもの。それは当たり前のことです。

そして、人間なのは私たちも同じ。

・そんなつもりがなくても、ちょっとした発言がモラハラになってしまうこともある。

・相手を見下したり、ないがしろにする気持ちは言葉のはしから伝わる。

無自覚のモラハラ加害者にならないために、忘れずに覚えておきたいものです。

まとめ

角田光代「坂の途中の家」のあらすじ・ネタバレ・感想でした!

家庭という小さな世界のなかの不穏。

里沙子の主観ではありますが、一見平和な3人家族の生活にこうもゾッとする瞬間があるのかとゾクゾクさせられました。

『感情移入度100%の心理サスペンス』というキャッチフレーズに偽りなし、ですね。

私でさえどっぷり共感したので、里沙子や水穂と同じ小さい子どものいる新米ママが読めば感情移入度500%くらいには達しそうな予感がします。

では最後にまとめです。

あらすじまとめ
  • 里沙子は被告人に自分を投影し、裁判を通して自分自身と向き合う
  • 夫の穏やかな言葉に潜むモラハラに里沙子は追い詰められていく
  • それは憎しみではなく歪な愛の形だった
感想まとめ
  • 結末まで読んでもいろいろハッキリしない
  • 夫婦のあり方について考えさせられる
  • 無自覚なモラハラ加害者にはならないようにしたい

ドラマ情報

キャスト

柴咲コウ……山咲里沙子
田辺誠一……山咲陽一郎

水野美紀……安藤水穂
眞島秀和……安藤寿士

風吹ジュン……山咲里子(義母)
光石研……山咲和彦(義父)

他……桜井ユキ・松澤匠・松本笑花・西田尚美・倍賞美津子・高畑淳子・佐藤めぐみ・滝沢沙織・利重剛・酒井美紀

シリアスなドラマにピッタリな渋い面々がいい感じですね。



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POSTED COMMENT

  1. キウイ より:

    すごく分かりやすい解説、感想でした!長かったけど、読んで良かった!
    ドラマを見て私も同じような境遇なので考えさせられます。

    • わかたけ より:

      最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
      わかりやすいと言ってもらえてうれしいです!

  2. かるび より:

    ドラマを観て、原作はどうだったのかと気になって検索したらこちらにたどりつきました。解りやすい解説、ありがとうございます。時間があれば本も読んでみたいと思います。

  3. ワイワイM より:

    ドラマ、原作共に読んでおりませんが、あらすじを読んでみて今度観てみようとおもいます。旦那の立場の話ももっと詳しく掘り下げて描いてあればより公正に裁判の正当性?が深くえががれるのではと思いました。あくまで、自論で原作はよんでおりません。

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