グリコ・森永事件が発生したのは1984年(昭和59年)
そのとき私はまだ生まれていませんでした。
だから「罪の声」を読んでもどこまでが実話でどこからが創作なのかいまいちわからなかったんですよね。
もやもやしたので、読み終わった直後に「グリコ・森永事件」で検索をかけました。
というわけで今回は小説「罪の声」と「グリコ・森永事件」の共通点・相違点をまとめていきたいと思います!
罪の声はどこまで実話なの?
小説「罪の声」の巻末には次のような但し書きが掲載されています。
本作品はフィクションですが、モデルにした「グリコ・森永事件」の発生日時、場所、犯人グループの脅迫・挑戦状の内容、その後の事件報道について、極力史実通りに再現しました。
これは本当にその通りで、「罪の声」では細部に至るまで徹底的に「グリコ・森永事件」が再現されています。
違いといえば名称が変えられているくらいなので、逆説的に「罪の声」さえ読めば「グリコ・森永事件」の概要をくわしく理解できるといっても過言ではないくらいです。
- ギンガ ⇔ グリコ
- 又市 ⇔ 丸大食品
- 萬堂 ⇔ 森永製菓
- ホープ食品 ⇔ ハウス食品
- 鳩屋 ⇔ 不二家
- 摂津屋 ⇔ 駿河屋
- くら魔天狗 ⇔ かい人21面相
ただし、注意が必要なのは一致しているのはあくまで以下の点だけということです。
- 発生日時
- 場所
- 犯人グループの脅迫・挑戦状の内容
- その後の事件報道
小説と違って、現実の「グリコ・森永事件」の真相はいまだに闇の中。
なので当然、「罪の声」で描かれている犯人側の描写は完全にフィクションです。
- 犯人の人数
- 犯行動機
- 目的
- 1年半で脅迫から手を引いた理由
- 犯人の現在
「罪の声」ではこれらが生々しく描かれていましたが、現実では何ひとつわかっていません。
何ひとつ、です。
曽根達雄、生島秀樹、青木龍一といった登場人物は架空の存在であり、被害企業と違って特定のモデルがいるわけではありません。
また、現実では「テープの声の児童」も見つかっていないので、曽根俊也や生島総一郎もあくまで物語のために創作されたキャラクターということになります。
なまじ事件の経緯が史実とピタリ一致しているので錯覚しそうになりますが、実は「罪の声」の物語はほとんど創作されたものだということがわかりますね。
グリコ・森永事件ってどんな事件だったの?
基本的な事件については本当に「罪の声」の通りです。
「かい人21面相」を名乗る犯人は、
- 約1年半の期間で計144通の脅迫状・挑戦状を送り
- 誰一人として逮捕されないまま
- 「くいもんの 会社 いびるの もお やめや」という終息宣言を出して
そのまま歴史の闇へと消えていきました。
すべての事件が時効を迎えている今でも、犯人の情報はほとんどわかっていません。
事件の捜査に関わった捜査員の延べ人数は130万1千人、捜査対象は12万5千人と言われています。
被害の規模は?
1.経済的被害
各企業に数千万円から一億円を要求した「かい人21面相」ですが、結局、一度も現金の受け渡しには成功していません。
これだけの事件を起こしておきながら、(少なくても表向きは)犯人側の利益はゼロ円でした。
とはいえ、企業側が警察に黙って犯人側と裏取引していた可能性はあります。
また、犯人側の狙いが最初から株価操作だった場合、犯人は株の売買で100億円規模の利益を上げていた可能性があるとも言われています。
2.人的被害
一般的に広く認知されている「グリコ・森永事件」といえば、やはり青酸入り菓子をバラまいた事件でしょう。
いつも使っているスーパーに並ぶ菓子に毒が入っているかもしれない、という日常と隣り合わせの恐怖は今もなお人々の記憶に強烈に焼きついています。
ただ、実はこの青酸菓子ばら撒きによる死者はゼロ人なんですよね。
菓子には
- 「どくいり きけん たべたら しぬで かい人21面相」
- 「どくいり きけん」
- 「どくなし あんしん」
といったラベルが貼られてあったため、実際に毒菓子を口にした被害者はいませんでした。
なので、青酸菓子ばら撒き事件は「殺人未遂事件」として扱われています。
とはいえ「グリコ・森永事件」では一人の尊い命が犠牲になりました。
ハウス食品事件で不審車両を取り逃がした滋賀県警本部長が、失態の責任をとって焼身自殺したのです。
その後まもなく犯人は「くいもんの 会社 いびるの もお やめや」と終息宣言を出していますが、その理由は亡くなった本部長への香典代わりというものでした。
亡くなった本部長は遺書を残していませんでした。
一説では、ハウス食品事件の失態の責任をすべて押しつけられたことに抗議するための焼身だったともいわれています。
本部長はノンキャリアから叩き上げで昇進した人物でした。
犯人は何者?
「グリコ・森永事件」の犯人はどのような人物だったのでしょうか?
実は「罪の声」で描かれている犯人グループには、当時警察がマークしていた容疑者たちの特徴が反映されています。
具体的には
- グリコの関係者
- 仕手グループ
- 元暴力団組長グループ
などですね。
中でも警察が特に本命として捜査していたのが、元暴力団組長の実業家を中心とするグループ。
この元組長は過去にグリコから5億円を恐喝しようとしていましたし、「グリコ・森永事件」の被害企業の関係者から3億円を受け取っていました。
さらに元組長の身辺にはグリコに恨みを持つ人物もいて……。
状況証拠ではありますが、どう考えても怪しいですよね。
しかし、実際には有力な物証も関係者の自白もなく、逮捕には至らず。
このグループへの捜査が空振りに終わったことで、警察の捜査は事実上打ち切られました。
「罪の声」の青木龍一は、もしかしたら「グリ森事件」の真犯人像にかなり迫っていたのかもしれません。
阿久津・俊也にはモデルがいた?
「罪の声」のW主人公、阿久津英士と曽根俊也。
この二人は架空のキャラクターではありますが、まったくのゼロから創作された登場人物であるとも言い切れません。
というのは、著者の塩田武士さん自身がこの二人に反映されているからです。
以下はインタビューにおける塩田さんのコメント。
「阿久津には記者時代の自分を投影しました」
そう、実は塩田武士さんは元新聞記者!
専業作家として独立する2012年までは神戸新聞社にお勤めでした(ちなみにご出身は兵庫県尼崎市)
新聞社内での経歴もどこか阿久津を彷彿とさせるものがありますし、阿久津英士は塩田武士さんの分身だと言っても過言ではないでしょう。
一方、阿久津が仕事人としての塩田さんの分身だとするなら、俊也は家庭人としての塩田さんの分身。
再びインタビューでのコメントをご紹介します。
僕自身、2013年に長女が生まれたんですが、本当にかわいくて、宝物のような存在です。そんなに大切なわが子を犯罪に使うなんて、僕にはとても考えられない。
俊也は曽根家の真実を明らかにしたいと望む一方で、事件を明らかにすることで幼い娘の未来を脅かしてはならないとも強く思っていました。
そんな『父親としての俊也』には塩田さん自身の心情・経験が反映されていたのでしょうね。
阿久津や俊也に血の通った人間性を見出せるのは、きっと彼らの中に塩田武士さん自身がいるからなのだと思います。
まとめ
では、最後に今回のまとめです!
- 報道された事実関係に関する情報は実話
- 犯人側やテープの子どもに関する情報はフィクション
- ただし、推察される犯人の特徴は反映されている
「罪の声」は「グリコ・森永事件」に関する徹底的な取材と推察をもとに執筆されています。
著者の塩田武士さんは事件現場にも足を運び、当時の情景を頭に思い描いたそうです。
小説の中の犯人や真相は塩田さんの創作によるものですが、もしかしたら真実からそうかけ離れたものではないのかもしれませんね。
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