本格ミステリ

「罪の声」あらすじとネタバレ!グリコ・森永事件の犯人は誰?

みなさんは「グリコ・森永事件」をご存知でしょうか?

  • グリコの社長を誘拐
  • 青酸入り菓子のばら撒き
  • 犯人は「かい人21面相」を自称

などなど、強烈なインパクトを社会に与えた大事件ですね。

マスコミや警察を手玉にとって次々と食品系企業を脅迫した犯人の正体は今もわかっていません。

そのため「グリ森事件」は昭和最大の未解決事件として語られています。

はたして犯人は誰だったのか?

何が目的だったのか?

誰も知らないはずの『真相』を描いた小説が塩田武士「罪の声」です。

といっても、あくまで「事実関係をベースにしたフィクション」なんですけどね。

それでも極力史実を再現したという物語には「もしかしたら本当にこんなことがあったのかも?」と思わせるだけの説得力が宿っています。

本屋大賞第3位にも納得の、骨太で読みごたえのある小説でした。

というわけで今回は塩田武士「罪の声」のあらすじとネタバレをお届けします!

あらすじとネタバレ

「ギンガ・萬堂事件」

複数の製菓・食品メーカーを脅迫し、青酸入りの菓子をバラまくなどして世間を騒がせた「ギン萬事件」は、日本犯罪史上最大の未解決事件として歴史に刻まれている。

事件では犯人グループ「くら魔天狗」が脅迫企業に対して児童の声で現金の受け渡し場所を指示していたことも特徴のひとつだった。

たとえば、こんなふうに。

「きょうとへむかって、いちごうせんを……にきろ。ばーすーてーい、じょーなんぐー(城南宮)の、べんちの、こしかけの、うら」

事件から31年。

「ギン萬事件」はとっくに時効を迎えている。

しかし、いまだに声の児童の正体さえ明らかになっていない。

「これは、自分の声だ」

曽根俊也が父の遺品の中から見つけたカセットテープ。

録音されていたのは「ギン萬事件」で使用された児童の声だった。

31年前といえば、俊也は当時5歳。

その頃の記憶は残っていない。

しかし、それは間違いなく幼い日の俊哉自身の声だった。

「何やこれ……」

遺品の中からは、他にも黒革のノートが見つかった。

びっしりと英語で埋め尽くされているので読むことはできないが、「ギンガ」「萬堂」という日本語が混じっている。

俊也は嫌な想像を抑えることができなかった。

父は「ギン萬事件」の犯人のひとりなのか?

「ギン萬事件」の犯人は誰だったのか?

今さらすぎる後追い調査を命じられ、阿久津英士はうんざりした。

今年の大日新聞の年末企画は「未解決事件特集」

阿久津はその応援に駆り出されたのだった。

どうして文化部記者の自分がそんなことを……。

嘆いてみても仕方がない。

阿久津はとりあえず事件の概要をまとめるところから始めることにした。

「ギンガ・萬堂事件」

期間:1984年(昭和59年)3月から翌1985年8月にかけての約1年半

被害企業:ギンガ・又市・萬堂・ホープ食品・鳩屋・摂津屋の計6社

犯人グループは各企業に脅迫状を送り、多額の現金を要求した。

各企業から通報を受けた警察は、現金受け渡し時の現行犯逮捕を計画。

しかし、犯人たちは非常に慎重な姿勢を見せ、ついに現金の受け渡しに現れることはなく、企業から一円も受け取ることなく終わった。

とはいえ、放火や青酸入り菓子のばら撒きなど、犯人たちが世間に与えたインパクトは大きい。

犯人たちはマスコミを利用して「○○の製品には毒が入っている」などと情報を流したため、標的となった企業の売り上げは激減。

特に大手菓子メーカーである「ギンガ」「萬堂」の二社は倒産寸前にまで追い込まれた。

一連の事件は1985年8月に犯人グループが終息宣言を出したことで幕を閉じる。

犯人のひとりすら見つからないまま、「ギン萬事件」は2000年に時効を迎えた。

発生から31年が経過した今でも、事件の全貌は明らかになっていない。

真相を追う【曽根俊也】

俊也は父の同級生・堀田信二(61)の協力を得て、事件を追い始めた。

まず浮かんできたのは、俊也の祖父と伯父(父の兄)の存在だ。

俊也の祖父・曽根清太郎はかつて「ギンガ」の社員だった。

清太郎は過激派左翼の内ゲバに巻き込まれて死亡しているのだが、その際、ギンガは清太郎も左翼運動に関わっていたとして冷遇し、葬式にも最低限の人員しか寄こさなかったという。

そんなギンガの対応に怒り心頭に発したのが俊也の伯父・曽根達雄だ。

達雄は左翼運動に加わり自ら過激派となるものの、やがて一線を退きイギリスへと渡っている。

そして、1984年2月(事件発生の前月)に一時帰国。

帰国の目的は不明だが、ギンガや萬堂の情報を調べていたというから怪しい。

曽根達雄のその後の足取りは、一切不明である。

もし達雄が犯人グループの一員だったのなら、その人間関係のなかに他のメンバーもいたのではないか?

堀田は生島秀樹という男に目をつけた。

生島は柔道教室で達雄の先輩だった男だ。

滋賀県警の暴力団担当刑事だったが、ヤクザとの癒着が問題となり懲戒免職されている。

何より生島が怪しいのは、ある日を境に一家そろって失踪している点だ。

生島家が失踪したのは1984年11月14日。

ホープ食品に要求した大金を巡って、犯人グループと警察が熾烈な攻防を繰り広げた日である。

生島秀樹が怪しい理由は他にもある。

当時、生島家の長女・は中学三年生、長男・聡一郎は小学二年生。

「ギン萬事件」に使用された3人の子どもの声のうち、俊也以外の2人の人物像と一致しているのだ。

「ギン萬事件」で使われた残り二人の子どもの声は、やはり望と聡一郎だった。

11月14日の朝、望と聡一郎、そして秀樹の妻・千代子は二人の男(ソネとヤマシタ)に連れられて夜逃げならぬ『朝逃げ』を果たす。

とつぜん始まった辛い逃亡生活の中、望は何者かに襲われて死亡。

その後、聡一郎は放火事件を起こして失踪している。

真相を追う【阿久津英士】

1984年の新聞に目を通した阿久津は、ひとつの仮説を組み立てた。

『犯人の狙いは、株価操作だった』

海外からの買い注文により、事件の二か月ほど前から被害企業の株価は上昇していた。

そして「ギン萬事件」により被害企業の株価は暴落。

この株価の乱高下が意図的なものであったとすれば、犯人グループは株取引で莫大な利益を得ていたことになる。

企業に要求した現金はフェイクで、本命が株価操作だったとすれば、犯人グループが現金の受け渡しに現れなかったことにも説明がつく。

となると、犯人グループには株に詳しい人間(仕手筋)がいたはずだ。

~・~・中略・~・~

1984年の秋、犯人たちは料亭「し乃」で会合を開いていた。

当時から働いている板長の証言によれば、犯人グループの人数は9人だったという。

一方、阿久津が握っている犯人グループの情報は次のとおり。

【吉高弘行】
仕手筋の若い男。事件前に被害企業の銘柄を調べていた。

【上東忠彦】
利権屋。吉高の金主(≒仕手の資金提供者)だった?

【金田哲司(金光哲)】
自動車盗。「し乃」の女将と恋人関係にあった。在日二世。

【金田貴志(金貴成)】
哲司の仕事仲間。在日二世。警察に唯一顔を見られ、似顔絵をつくられた「キツネ目の男」

【青木龍一】
ヤクザ。吉高・上東・金田哲司のそれぞれと接点があった。「くら魔天狗」のボス?

9人中5人。これだけでも十分に特ダネだ。

しかし、阿久津は「まだ足りない」と感じていた。

「ギンガ・萬堂事件」最大の山場といえば、ホープ食品を恐喝した事件だろう。

犯人グループの要求は現金1億円。

それに対して警察は2府4県、計1000名以上の人員を動員して現金受け渡しの際の現行犯逮捕を狙った。

結果として警察は犯人グループを追い詰めるものの、あと一歩のところで取り逃がし、世間から手酷く非難されることになる。

この事件に関して、阿久津にはわからないことが2つあった。

1つ目は「キツネ目の男の行動」だ。

犯人グループは『指示書』によって何度も現金の運び手に指示を出していた。

ホープ食品恐喝事件では、たとえば大津サービスエリアの観光案内版の裏に『指示書』が貼り付けてあった。

しかし、記録を振り返ってみると、大津サービスエリアではキツネ目の男がベンチの裏に『何か』を貼り付けようとしている姿が目撃されている。

これでは指示書が2つあったことになってしまうのではないか?

そこで登場するのが、2つ目の謎「滋賀県警特命チームの行動」だ。

11月14日当日、滋賀県警は独自に特命チームを編成し、中央とは異なる行動をとらせていた。

特命チームは大津サービスエリアで犯人グループが落としたらしきメモを発見している。

書かれてあったのは京都の住所。おそらく「くら魔天狗」のアジト。

特命チームはすぐにその住所に向かったが、すでにもぬけの殻だったという。

わからないのは、滋賀県警がそこで捜査から手を引いた理由だ。

京都のアジトのことは一切報道されていない。

なぜ滋賀県警は京都のアジトのことを中央に黙っていた?

不可解な2つの謎を結び、阿久津はある仮説を導き出した。

『犯人グループは仲間割れしていた?』

キツネ目の男が貼り付けていたのは指示書ではなく、滋賀県警が拾った京都のアジトの住所が書かれたメモだったのではないか?

この事件より少し前に開かれた「し乃」の会合では『手打ち』という言葉が使われている。これは2つのグループの間に対立構造があったという証ではないか?

 

『滋賀県警が京都のアジトで発見したもの』

滋賀県警が中央に京都のアジトのことを黙っていたのは、身内の指紋が出てきたからではないか?

たとえば、元あるいは現職警察官の指紋……。

「し乃」の板長を通じて、阿久津は俊也たちの存在を知る。

犯行に使用されたテープの子ども。

記者として、その存在を見逃すわけにはいかなかった。

俊也の経営する「テーラー曽根」を訪れた阿久津は、ずばり本題に切り込んだ。

「ご自宅からテープとノートが出てきた、と伺いました」

瞬間、俊也の目の色が変わる。

「知りませんっ! お引き取り下さい!」

当たり、だ。

すでに生島秀樹と曽根達雄の情報はつかんでいる。

あとは直接、曽根達雄を訪ねればいい。

「あなたの伯父さんに会ってきます」

動揺を隠しきれない俊也の様子を確認してから、阿久津は店を出た。

興奮すると同時に、ひやりとした恐怖心を覚える。

(曽根俊也が事件から手を引いたのは、家族を守るためだろう。俊也には幼い娘がいる。もし、曽根家と「くら魔天狗」との間に関わりがあると知れればどうなる?)

人ひとり、いや、家族の人生をも狂わせてしまうかもしれない。

動揺する俊也の姿を見て心を痛めたのもつかの間、阿久津は再び力強く歩き出した。

(それでも「ギン萬事件」を未解決のままにしてはいけない)

一人の記者として、あるべき社会のために。

阿久津は海を渡り、イギリスへと飛んだ。

犯人と真相

曽根達雄はイギリスで生きていた。

待ち望んだ犯人との対面。

これまで調べ上げてきたこと、頭の中で組み立てた仮説。

阿久津はそのすべてをぶつけ、「どうか話を聞かせてください。お願いします」と達雄に深く頭を下げた。

達雄はしばらくの間黙っていたが、やがてゆっくりと、落ち着いた声で自らの半生と「ギンガ・萬堂事件」について語り始めた。

「私の父、曽根清太郎は過激派左翼に殺されました。1974年のことです。父はギンガに勤めていました」

理不尽に父親を失った達雄は、父親を手にかけた集団と敵対する組織に所属し、過激派活動に身を投じた。

しかし、やがて自分もまた父の仇と同類になってしまっていると気づき、組織と距離をとることを決意する。

とはいえ、狂乱の時代のなか、簡単に足を洗うことはできない。

達雄は逃亡のためイギリスへと飛ぶ。

イギリスで達雄を待ち受けていたのは、虚しさだった。

社会主義により生活が保障されると、人々は働かなくなり、国力が落ちる。

沈みゆく船となったイギリスを救ったのはサッチャーであり、戦争だった。

結局、人間は争いを止められない愚かな生き物なのか。

そうして虚しさに支配されていた達雄の前に、生島秀樹が現れた。

警察を追われた生島は闇社会でのし上がろうとして失敗し、多額の借金を背負っていた。

生活すら苦しいなか生島がイギリスまでやってきたのは、達雄を勧誘するため。

具体的な計画はまだ何もなかったが、生島の目は「一発逆転してやる」という欲望でギラついていた。

「変な話ですが眩しく見えたんです」

生島から計画立案を一任された達雄は、黒革のノートを手に着々と準備を進めていく。

特にオランダの「ハイネケン誘拐事件」に関心を持った達雄は、事件について詳しく調査し、「ギンガ・萬堂事件」の基盤を構成した。

一方で、あらゆる恐喝事件を調べ上げた末に、達雄は「身代金の受け渡しは決して成功しない」という結論に達する。

そこで達雄は誘拐・脅迫による株価操作で利益を出す計画を立てた。

当初、達雄が標的にしたのはギンガ、又市、萬堂の三社のみだった。

9人の「くら魔天狗」は阿久津が予想した通り一枚岩ではなかった。

仮に青木を中心とするグループをAグループ、生島を中心とするグループをBグループとする。

2つのグループのメンバーと役割は以下のとおり。

Aグループ

【青木龍一】
青木組のトップ。インテリヤクザである青木は企業の内部情報を入手することができた。

【吉高弘行】
仕手筋の男。株の売買を担当。

【上東忠彦】
利権屋。吉高の金主。株売買の元手になる資金を提供。

【金田哲司】
自動車盗。犯人グループが使う盗難車を手配した。

【金田貴志】
哲司の仕事仲間。現場での作業を担当。警察が手配した「キツネ目の男」

Bグループ

【生島秀樹】
元滋賀県警の刑事。警察の内部事情に詳しい。計画の発起人であり、Bグループのメンバーを集め、青木と協力関係を築いた。

【曽根達雄】
元活動家。「ギンガ・萬堂事件」の計画を立てた。

【山下満】
生島の後輩で産廃業者。青酸ソーダを入手。

【谷敏男】
生島の後輩で電電公社の職員。逆探知や無線の知識を提供した。

大きく分けると、Aグループは現場仕事を、Bグループは頭脳労働や交渉・脅迫を担当していた。

達雄によれば、計画が進むにつれて次第に実行犯であるAグループの方が立場を強めていったのだという。

やがてAグループは達雄の計画を無視して身代金を本当に奪おうとして失敗(又市事件)

この事件が火種となり、両グループは断裂。

予定していた萬堂までの事件が終わると、青木は素知らぬ顔で株売買の利益の9割以上をAグループで分配してしまった。

当然、生島は怒り心頭。

鬼の形相で青木をつけ狙った。

「し乃」での会合は、そんな状況下で開催された。

生島(Bグループ)は「もっと金を寄こせ」と主張。

一方、青木(Aグループ)は「もう1回脅迫を仕掛けよう」と主張。

結果、両グループは4社目のターゲットとしてホープ食品を狙い、1億円の身代金はすべてBグループの取り分とすることで合意した。

達雄は「身代金の受け渡しは不可能だ」と主張したものの、どうしても金が入用だった生島は耳を貸さなかったという。

ホープ食品の現金受け渡し前日。

生島は打ち合わせのため一人で京都にある青木たちのアジトへ出向き、そこで殺された。

何が起こったのかはわからない。

おそらくは金絡みのトラブルか。

ともかくBグループは生島を追って京都に向かった谷から連絡を受け、生島の死を知る。

達雄と山下はすぐに生島家に行き、千代子・望・聡一郎を逃がした。

青木は「生島は借金取りに殺された」としらを切り、作戦続行を主張。

達雄はこれを了承した。

……というのはAグループを油断させるための罠。

達雄は裏でAグループを警察に差し出し、Bグループだけが逃げ延びるための計画を立てていた。

ホープ食品の現金受け渡し当日。

Bグループはキツネ目の男に変装し、わざと警察に見つかるよう京都のアジトの住所のメモを落とした。

警察が目撃した「ベンチの裏に何かを貼り付けようとしているキツネ目の男」の正体がこれだ。

アジトに警察が踏み込めば、青木をはじめとするAグループのメンバーが逮捕されるのは時間の問題。

青木は「Bグループも道連れにしたいが、生島殺しを話されては困る」というジレンマに陥るため、簡単には口を割れない。

達雄は「Bグループのメンバーが逃げるだけの時間は稼げる」と計算していた。

なお、この日、金田哲司の乗るライトバンが地元警察に見つかったのも、達雄の計算のうちである。

ところが、実際には達雄の計画は十全には機能しなかった。

・金田哲司の運転技術がずば抜けていて、警察をまいてしまったこと

・アジトから生島の指紋が見つかったこと(によりアジトの情報が滋賀県警によって隠匿されてしまったこと)

予想外の要因が重なった結果、Aグループのメンバーは誰一人として逮捕されなかった。

この内部分裂により、犯人グループは瓦解。

鳩屋と摂津屋の脅迫はAグループの最後のあがきだった。

その後、達雄は実家の「テーラー曽根」に例のカセットテープと黒革のノートを残し、イギリスへと戻った。

結末

日本に戻った阿久津は、達雄から聞いたことを俊也に伝えた。

俊也(父は犯人グループのメンバーじゃなかったのか……)

安心する俊也。しかし、その心中はいまだ晴れない。

・父親が無関係ならば、なぜ自分の声が録音されたのか?

・自分と同じ「テープの子ども」である聡一郎はその後どうなったのか?

この点が明らかにならない限り、俊也にとっての「ギンガ・萬堂事件」は解決しない。

そして、その思いは阿久津も同様だった。

「俊也さん、人探しをしませんか?」

「人探し?」

「ええ。聡一郎さんです」

「いや、でもそれは……」

俊也は気が進まなかった。今さら「ギン萬事件の子ども」として世間にさらされることが聡一郎にとってのプラスになるわけがない。

そんな俊也の心中を見抜いたかのように、阿久津は口を開いた。

「イギリスで曽根達雄さんに会って、犯人たちのしょうもなさを目の当たりにしました。大事件やって意気込んでふたを開けたら、何も入ってなかった。それまでの取材のことを思うと虚しかったんですが、帰りの飛行機の中で気づいたんです。未解決事件だからこそ、今、そして未来につながる記事が必要なんやと」

「未来……」

「まだ生島千代子さんの安否がわかっていません。僕たちにもできることがあるんじゃないですか」

愛媛、広島、岡山。

聡一郎の足取りを追って西日本を駆け巡った阿久津と俊也がたどり着いたのは、東京だった。

聡一郎との対面。

本人の口から語られる聡一郎の半生は、それは凄絶なものだった。

聡一郎の半生

1.生島望を殺したのは金田哲司

2.千代子と聡一郎は青木組のフロント企業で働くことになる

3.中学生の時、聡一郎は若い組員と事務所に火をつけて逃走

4.それ以来、聡一郎は青木組の追手に怯えながら各地を転々として生きてきた

聡一郎は目を患っているが、保険証がないので病院には行けない。

生活が苦しく、違法な小遣い稼ぎをしなければ生きてこられなかった。

婚約していた恋人の両親から結婚を反対され、破談になったこともある。

貧困と孤独。

昏く濁った聡一郎の目が、その人生を物語っていた。

「もう何かから逃げる必要はないんじゃないですか?」

ずっと口を閉ざしていた俊也が優しく話しかけた。

「青木龍一は五年前に死んで、組も解散しています」

「青木が……」

聡一郎は呆けたような顔を見せた後「はぁ」と息を吐いて両手で顔を覆った。

張りつめていた糸が切れてしまったようだった。

「放火事件にしても、あなたは当時中学生で、火を放ったのも津村(若い組員)です。もう一度やり直せるはずです」

俊也の言葉には心がこもっていたが、聡一郎は手遅れだというように首を横に振った。

「何か、なさりたいことはないんですか」

「母に会いたいです」

聡一郎の目に涙が浮かぶ。

「僕は……、母親を……、母を置いて逃げてしまいましたっ」

嗚咽をもらし、震える唇を噛みしめながら聡一郎は言った。

「せめて一言、目が見えてるうちに、お母ちゃんに謝りたいです」

俊也が目を拭ったのを見て、阿久津も堪えきれなくなった。

何としてでも母親に会わせる。

両目から際限なく涙を流す男を見て、阿久津は心に決めた。

イギリスの達雄から俊也宛てに手紙が届いた。

そこに書かれていたのは俊也が知りたかった『答え』だった。

「このテープを録音したんは、私です」

曽根真由美はよく通る声で息子にそう告げた。

「ギン萬事件」に間接的に関わっていたのは、亡き父ではなく母の方だったのだ。

真由美は警察に恨みがあった。加えて達雄には借りがあった。

それに何より生来の血の気の多い性格が、真由美にそうさせた。

とはいえ、真由美の中に後悔がなかったわけでない。

はたして自分のしたことは正しかったのか。それとも間違っていたのか。

俊也にわざとテープと黒革のノートを見つけさせたのは、息子に判断をゆだねるためだった。

「ギン萬事件」を巡る長い旅を終えて、俊也はひとつの決断を下した。

携帯電話で阿久津の番号を呼び出し、告げる。

「僕なりのやり方で未来に進もうと思います」

エピローグ

阿久津が書いた「ギンガ・萬堂事件」の記事は、世間に大きな影響を与えた。

聡一郎が記者会見を開き、俊也が匿名でインタビューに応じる姿勢を見せたことも熱狂を加速させた。

そして今、阿久津と俊也は神戸の特別養護老人ホームにいる。

報道によりついに千代子の居場所が見つかったのだ。

「聡ちゃん……」

「お母ちゃん……」

30年ぶりの再会。

泣きながら抱き合う母子の姿を見て、阿久津と俊也は「ギンガ・萬堂事件は終わったのだ」と実感した。

別れ際、俊也は阿久津に握手を求めた。

阿久津は快くそれに応じた。

「お元気で」

「俊也さんも」

遠ざかる阿久津の背を見ながら、俊也は聡一郎の人生を思った。

もし「ギン萬事件」に巻き込まれていなければ、彼はどんなに幸せな人生を送れただろう。

失われた聡一郎の幸福を思うと胸が苦くなる。

それでも今、彼がこうして再び母親と再会できたことは未来につながる希望なのだと、そう信じたい。

俊也はまぶたを閉じ、すべてを出し切るように長く息を吐いた。

<完>

「罪の声」はどこまで実話?グリコ・森永事件との違いを解説!グリコ・森永事件が発生したのは1984年(昭和59年)そのとき私はまだ生まれていませんでした。だから「罪の声」を読んでも...

まとめ

今回は塩田武士「罪の声」のあらすじとネタバレをお届けしました!

ちょっと長くなったので、あらためて大事なところだけまとめておきますね!

まとめ
  • 俊也の父親は犯人ではなかった。
  • 犯人グループは9人。俊也の伯父・曽根達雄は作戦立案を担当した中心メンバーだった。
  • 犯人グループは内部分裂により解散した。
  • 俊也の声が脅迫に使われたのは、俊也の母が達雄に協力していたから。

塩田さんは「グリコ・森永事件では子どもの声が使われていた」という事実からこの物語の着想を得たそうです。

だから、最後は「犯人や事件の全貌が明らかになって終わり」ではなく、俊也と同じ「テープの子ども」である聡一郎のエピソードで締めくくられています。

子どもを犯罪に巻き込めば、その分、未来から希望が奪われる。「ギン萬事件」の罪とは、ある一家の子どもの人生を粉々にしたことだ。

読み終わったとき、この阿久津のモノローグが強く印象に残っていました。

映画化について

さて、そんな「罪の声」が映画化!

主演はなんと小栗旬さん(阿久津役)と星野源さん(俊也役)!

ぱんだ
ぱんだ
めちゃくちゃ豪華!

この時点で注目映画になること間違いなしですね!

とにかく登場人物の多い作品ですし、まだ発表されていない他のキャストも気になるところ……。

骨太な原作がどんなふうに映像化されるのか、今から楽しみです。

わかたけ
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映画「罪の声」は2020年公開!

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